助けを求める
突然不安に襲われることがあり、今がそんな時なのかもしれない。
現在の実感では、普段麻痺して忘れていた不安を思い出したというほうが正しいように思われる。
私は恋人と一緒にいた。恋人の手は優しくて、体は温かかった。
私は耳を彼の胸にあてて、心臓の音を聞いていた。
そのうち、私は悲しいことを考え始めた。この人は私を好きなのではない。
セックスしたいとき、あるいは女の体を触りたいときに、私が必要なのだ。
世の中には強姦も強制猥褻もある。相手を好きかどうかは、体に触れるかどうかとは関係ないのだ。
恋人は仕事が忙しく、一緒にどこかへ行くことはない。時間のあるときは、ゲームが優先される。
これが、観察から得られている事実である。彼は私と同じ時間を過ごすことに価値を見出していない。
私と同じものを見て、お互いを記憶し、共に歩むことに価値を見出していない。
私ではないだれかのほうが本当は良いのだ。
思考に圧倒されて涙が出てくる。私はいないほうがいいし、私はそれをよく知っている。
よりによって好きな相手に、そんな「私」を押し付けるわけにはいかない。
私はいないほうがいい、ずっとずっと昔から、私は私はそれを心得てきたのだ。
とても寒いところにいるような気がしてきた。壁に刺さった釘から、皮を剥がれた私の肉が吊り下げられているくらいに寒いところ。
悲しくて寒くて涙を止めるのは無理だった。彼の服を濡らさないようにしなければならない。
誰かが叫んでいた。私にだけ聞こえる子供の声である。子供が何を叫び続けているのかを私はよく知っていた。何らかの説明をすれば恋人は何らかのケアをしてくれるかもしれなかったが、信用することはできなかった。意味がわからない、面倒くさい、メンヘラ怖い(笑)、心の中を想像すればこんなものしか浮かんでこなかった。とりもなおさず自分が自分を殴り続けている思考であった。
涙は止まらない、とても寒い、私は私でなければよかった、
頭の中では金属でできた雲が金切声をあげていたが、私の声にはならなかった。
恋人の胸から顔を上げて、涙を拭いた。見えたかどうか分からないし、見えて見なかったふりをする選択も面倒を避けるには十分に有力だ。
帰るね、おやすみなさい。